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松江地方裁判所 昭和41年(ワ)52号 判決 1968年8月08日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「一、別紙目録記載の不動産(以下本件不動産という。)につき松江地方法務局出雲支局昭和三八年一月二六日受付第四八一号をもつて設定された原因昭和三八年一月二五日手形取引手形貸付、証書貸付契約同日根抵当権設定契約、根抵当権者兼債権者被告、債務者植村平爾、担保提供者原告、元本極度額二、〇〇〇万円の根抵当権が存在しないことを確認する。二、被告は前項記載の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。三、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求原因として次のとおり述べた。

一、被告は昭和三七年一一月現在原告の娘婿訴外植村平爾(以下植村という。)の経営する個人商店池平石油店に対し四、五〇〇万円の債権を有していたが、植村は金融難から営業が行き詰り右債務を弁済する目どがつかず、被告もそれ以上の融資ができない事情にあつたので、池平石油店は倒産必至の状態にあつた。

二、そこでその頃被告、植村及び池平石油店の元卸先の訴外エツソスタンダード石油株式会社(以下エツソスタンダードという。)間で種々協議の結果池平石油店再建のため次のような再建計画案が建てられた。

1  エツソスタンダードは被告に対し金額二、〇〇〇万円、期間一〇年の定期預金をする。

2  被告は池平石油店に対し今後引続き二、〇〇〇万円を限度として営業資金を貸与する。

3  原告は被告が右計画案に基き今後新規に池平石油店に対し融資した債権を担保するため本件不動産につき極度額二、〇〇〇万円の根抵当権を設定する。

三、昭和三八年一月二五日頃右再建計画に基き原告、被告及び植村の三者間に次のような契約(以下本件根抵当取引契約という。)が締結された。

1  被告は植村に対し今後新たに営業資金として二、〇〇〇万円を極度とする融資をするため植村との間で右金額を限度とする手形取引、手形貸付及び証書貸付契約を締結する。

2  原告は右取引より生ずる債務を担保するため本件不動産につき被告と極度額二、〇〇〇万円の根抵当権設定契約をする。

四、原告は本件根抵当取引契約に基き本件不動産につき松江地方法務局出雲支局昭和三八年一月二六日受付第四八一号をもつて請求の趣旨記載のような根抵当権設定登記(以下本件根抵当権設定登記という。)をした。

五、ところが被告は右契約に反し植村に対し昭和三八年一月二五日以後一円の融資もせず、却つて同訴外人に対する旧債権四、五〇〇万円の回収を強行してその大部分を回収し、残額については手形の書替をさせて同書替手形の不渡を理由に昭和四〇年八月三一日頃本件根抵当取引契約(与信契約)を解除したので、池平石油店の再建は不能となり壊滅的打撃を受けた。

六、前記のとおり被告は本件根抵当取引契約に基き植村に対し一円の融資もしていないから昭和四〇年八月三一日現在本件根抵当権の被担保債権は零であり、且つその基本となる与信契約は解除されたから本件根抵当権は同日失効したものである。

七、しかるに被告は本件根抵当取引契約に基き植村に対し六、五七九、八一一円の債権を有する旨主張し、内金四五〇万円の弁済を受けるため昭和四一年四月一九日松江地方裁判所出雲支部に対し本件根抵当権に基く任意競売開始決定の申立をし、同月二二日その旨の決定がなされた。

八、よつて原告は本件不動産の所有権に基き本件根抵当権の不存在確認並びに本件根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、請求原因に対する答弁として、第一項は認める。第二項のうち原告主張の項植村、被告及びエツソスタンダードの間で池平石油店再建のため次のような再建計画案、即ちエツソスタンダードは被告に対し金額二、〇〇〇万円、期間一〇年の定期預金をする。被告は池平石油店に対し今後引続き二、〇〇〇万円を限度として営業資金を貸与する旨の計画案が建てられたことは認めるも、その余は否認する。第三、四項のうち原告が本件不動産につき請求の趣旨記載のような根抵当権を設定し、本件根抵当権設定登記を経由したことは認めるもその余は否認する。第五項のうち被告が昭和四〇年八月三一日頃本件根抵当権の基本となる与信契約を解除したことは認めるもその余は否認する。第六項は否認する。第七項のうち被告が昭和四一年四月一九日松江地方裁判所出雲支部に対し本件根抵当権に基く任意競売開始決定の申立をし、同月二二日その旨の競売開始決定がなされたことは認めるも、その余は否認する。

旨述べ、主張として、

一、原告、被告及び植村の三者間に昭和三八年一月二五日成立した契約の内容は次のとおりである。

1  植村(池平石油店)が被告に対し現に負担し、将来負担する手形割引、手形貸付及び証書貸付に基く債務等につき二、〇〇〇万円を限度とする貸付契約を締結する。

2  原告は右契約に基き植村が被告に対して負担する債務を担保するため本件不動産につき極度額二、〇〇〇万円の根抵当権を設定する。

二、被告は右契約締結後植村に対し三、〇〇〇万円に及ぶ融資をし、昭和四一年三月二三日現在右契約に基き植村に対し六、五七九、八一一円の債権を有するから本件根抵当権の被担保債権は存在する。

旨陳述した。

立証(省略)

別紙

不動産目録

島根県出雲市今市町字塚根壱壱九〇番地の参八

一、宅地  参参坪壱合五勺

(壱〇九、五九六七平方米)

同所同番地の参九

一、宅地  四壱坪壱合弐勺

(壱参五、九参参七平方米)

同所同番地の四拾

一、宅地  参五坪四合壱勺

(壱壱七、〇五七七平方米)

同所同番地の四壱

一、宅地  七拾坪参合四勺

(弐参弐、五弐八八平方米)

同所同番地の四弐

一、宅地  四七坪九勺

(壱五五、六六九四平方米)

同所同番地の四四

一、宅地  弐九坪八合九勺

(九八、八〇九八平方米)

同所同番地の四五

一、宅地  弐八坪四合八勺

(九四、壱四八六平方米)

同所同番地の四六

一、宅地  四拾坪五合七勺

(壱参四、壱壱五六平方米)

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